SPECTRUM

〜20世紀。日本で唯一の宇宙サウンド

 

スペクトラムの音楽を一言でいうなら「聴いたことない音楽」。後にも先にもスペクトラムと同じジャンルと思われる音楽を私は聞いたことがありません。炸裂するシンバル、唸るベース、鋭く切り込むカッティングギター、閃くピアノ、歌うボンゴ、そして大きく口を開ける巨大鮫のようなホーンサウンド、とか書くとそれっぽいですが言葉で表現するのは不可能ですね、やっぱり。

なぜ聴いたことないと思うのか?少し分析してみましょう。

(1)コード進行がヘンである。

 ヘンってのも失礼な言い方なんですが。。。(^^;通常一般のポップスでは(特に当時)絶対使わないようなコードの展開が行われます。奥慶一さんのピアノのテンションは非常にジャズテイストで渡辺さんのベースはまさにここぞというおいしいところでルートをはずし、ここぞというところでルートを経過したとき3管ホーンは分散コードになっていたりします。
 また、これは非常に特徴的なんですが、コードが半音ずつ経過してまったく関係ない(といってもいい)調に突入することが多いです。半音だけでなく短3度下がりとか完全4度上がりとかいろいろあるのですが、この階段状ドレミファ攻撃(?)が非常に宇宙っぽい。(例:Rock'n Roll Circusの間奏入りやQuestion'81&'82の間奏後半、Sunriseのイントロ部分など)

 勝手な想像ですが、イントロや間奏などのホーンセクション部分というのはテーマやサビなどのメイン部分とは別にバラバラに作ってあって、曲としてまとめる際に取捨選択するような作り方をしていたのではないでしょうか?(勝手な想像です。ごめんなさい。)そうなると当然もってくるものによっては本編とのつながりが厳しくなってくることもあるかもしれない、だがっ、そこは宇宙サウンドで強行突破だああ!!みたいな。(ホントに勝手な想像なんです。ごめんなさい。。。)えーと、何の話でしたっけ。

 そしてありがちなポップスは安易に(手癖で?)7thを多用したりするわけですが、SPECTRUMの音楽は7thを使うところと使わない部分を非常に厳密に区別しています。7thは必要最低限、とでもいいましょうか。これが非常にノーブルな凛々しさをかもしだしています。宇宙軍のテーマみたいな。(そうかと思うと西さんのギターはジミヘンコード使っちゃったりして大層ロッケンロールだったりして、このアンバランス具合がこれまたいいわけなんですが。)7thの代表選手は V7thでして、V7thがきたからには I に戻らないわけにはいかない、っていう水戸黄門の印籠みたいなものなんですが、それが7thのついてないただの V だったりすると「あれっ?今日は助さんが出すのっ?」みたいな、、、うむむむ?何か違うぞ?そういう例えじゃなくて、えーと、えーと。「お母さん、今日のハヤシライス味がヘンだよ!」「今日はボルシチなのよ」ってほうが近いかなあ。何に近いんだ??ん〜〜。

 ハヤシライスの起源がボルシチなのかどうかは知る由もありませんが、V7thってのは V から派生しているもので、V に比べて I に対する結合度が非常に高いわけです。そのV7thをあえてV にすることで I に帰結しようとする力を弱め、先を読めなくする効果があるんですねえ(ちょっと言い過ぎだけど)。V7thが出てくる場所は古来 V であった、というルーツを思い起こさせるような、新しくて旧式なかんじが何か、こう、「宇宙軍」なんですよねえ。(日本語壊れてきた。。。)

(2)バンド全体がシンコペーションとパラディドルの応酬である。

 もうひとの特徴として、繰り返しのフレーズの区切り目と拍や小節の区切り目が一致しない、または上もののフレーズの区切り単位とギターなどのリズム楽器のフレーズの区切り単位が一致しないような複雑なリズム構成がみられます。シンコペーションというのは強拍と弱拍の入れ替わりのようなものです。パラディドルというのはドラムやパーカッション、キーボードなど両手を使う楽器に使われる用語でシングルストロークとダブルストロークを左右交互に行いアクセントがずれていくことによりグルーブを生み出す手法です。

 でもって、具体的にここがシンコペーションとかパラディドルとかいう話ではなくて、SPECTRUMの音楽はバンド全体でこういった「アクセントのずれ」が計算されているように思います。代表的なのはRock'n Roll Circusの「トゥイアイヤ」と「なーななぬなーぬ」のコーラスでしょう。(知らない人はなんのこっちゃ、ですなぁ。。。(^^;)Act-Showのギターのカッティングはほーんとにほーんとにカッコいいんだ!これが。

(3)妙にストレートである。

 岡本さんのドラミングは気持ちいいくらいストレートです。前述したようにどの曲にも凝ったところがたくさんあるのですがすべてをひっぱるドラムのリズムは、ばっしゃんばっしゃんクラッシュが入り、どんどんアクセルを踏み込んでいくようなスピード感にあふれています。これはSPECTRUMをSPECTRUMたらしめている重大な要素だと思います。

(4)ボーカルは楽器扱いである。

 新田さんのファルセットは当時「アグネスチャンみたい」などと呼ばれたそうです。(時代を感じさせますなあ。)ブラックファンクの影響、みたいなこともいわれたりしますが、何かちょっと違うような気がするんですよねえ。SPECTRUMはボーカルもひとつの楽器としてとらえて曲を作っていたんだろうなぁ、と思います。(この見解、以前誰かが何かに書いてたような気がしなくもないのだが思い出せない。。)これは新田さんがボーカリストである以前に優れたトランペット奏者であることに起因していると思います。だいたい歌詞意味わかんないもん(笑)。歌詞カード全部カタカナかよ!(三村風。)

 てな訳でSPECTRUMの歌詞からは何のメッセージ性も感じ取れません。逆にいえば「俺たちは誰も踏み込んだことのない未来(または宇宙)へ旅立つのだ」というバンド全体の志向性が濃厚に感じ取れます。だからこそ歌詞カードは意味わからんカタカナにしたかったんじゃないのかな?ファルセットもそんな意識の現れともとれなくありません。

(5)ホーンがめちゃくちゃかっこいい!

 そしてこれは分析もくそもございません。テンポ140くらいでもの凄まじい16分音符が嵐のように襲ってきます。そしてダブルハイあたりまえの超ハイトーン。いったい何なんでしょう、あれは。涙が滝のようにとめどなく、とめどなく、、どあーー、どあーー。涙じゃないぞ!目から血が!!神さまーーー!!!

* * *

とまあ、分析めいたことをこねくりまわして書いてみましたが、すばらしさはやっぱり聴くことによって(AND見ることによって)のみ伝わりますよね。SPECTRUMの音楽は21世紀になった今きいてもやっぱり相変わらずSPECTRUMであり、すなわち永遠に古くならないわけであります。どんなジャンルにも属さない音楽。それがSPECTRUMです。ここまでご清聴ありがとうございました。とにかく聴くことです。SPECTRUMばんざーーーい!!(三唱)

 

『SPECTRUM』SPECTRUM 1979.08.25(1991.01.21CD化)

1.Act-show
2.First Wave
3.No Title
4.Rollita
5.Memory
6.Question '81&'82
7.Passing Dream
8.Tomato Ippatsu
9.Rock'n Roll Circus
10.1920,Amuse Company
〜Smile for Me

 

『OPTICAL SUNRISE』SPECTRUM2 1980.03.05(1991.01.21CD化)

1.Motion
2.F・L・Y
3.侍s
4.In the Space
5.ミーチャン Going to the Hoikuen
6.Song
7.Sunrise

 

『TIME BREAK』SPECTRUM3 1980.11.21(1991.01.21CD化)

Lyrische Suite "Respite of a Soldier"
(抒情組曲「戦士の休息」)
1.Vol.T Reminiscence(回想)
Vol.U Love(愛)
2.(1)His Native Place(故郷)
3.(2)Longing(思慕)
4.(3)Children(子供たち)
5.(4)God(神)
6.Vol.V An Illusion(幻夢)
〜The South Pacific(南太平洋)
7.Vol.W Awakening(目覚め)
8.夜明け(アルバ)
9.すべて懺悔だけ
10.四季
11.あがき
12.やすらぎ

 

『SECOND NAVIGATION』SPECTRUM4 1981.06.21(1991.02.21CD化)

1.NIGHT NIGHT KNIGHT
2.Summertime Story
3.Paradise
4.Never Can Say Good-Bye
5.たそがれFeedback
6.Slapdash
7.なんとなくスペクタクル
8.凍った太陽
9.Elegant Lady
10.Needs
11.Second Navigation

 

『SPECTRUM BRASSBAND CLUB』SPECTRUM5 1981.09.05(1991.02.21CD化)

1.ブラスバンドクラブのテーマ
2.I Love P.T.A
3.たじろぎの英語教師(グラマー・ティーチャー)
4.理科室のメロディ
5.小さく前へならえ
6.青春とはなんなんだ!
7.エレガント・レディ(うたたねの境地)
8.ファンキー身体検査
9.恋の給食タイム
10.先生のひとり言
11.ガンバレ応援団
12.正調もんぎり節(男女交際篇)
13.おちゃめな校長先生
14.先生がママにキスをした
15.遠足ロックン・ロール
16.もういくつ寝ると18才未満(伊勢佐木町ブルース)
17.コンクールが近いよ
18.マイ・フレンズ
19.イン・ザ・スペース
20.1920,アミューズ・カンパニー

 

『SPECTRUM FINAL』SPECTRUM6 1981.11.15(1991.02.21CD化)

DISK1
1.サンバ・イン・F
2.メモリー
3.ノー・タイトル〜モーション
4.F・L・Y
5.夜明け(アルバ)
6.ファースト・ウェイブ
  〜クエッション'81&'82
  〜ロリータ〜ミーチャン・ゴーイング・トゥ・ザ・ホイクエン
  〜パッシング・ドリーム
  〜ロックン・ロール・サーカス
DISK2
1.ソング
2.侍 ズ
3.アクトショー
4.ナイト・ナイト・ナイト
5.イン・ザ・スペース
6.サンライズ
7.トマト・イッパツ

 

SPECTRUMのDiscographyは偉大なる先達、studio未来来さんやひろみさんのページが大変詳しいです。TECH-Y.COMのMUSIC Linkからどうぞ。

 

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